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第一章 胎動編(004)

謎の帝国バドランディア

「あれは 今から10年以上も昔のこと…
 セエイが 今のマリュウと同じぐらいの歳の頃の話だよ…」

サテイエは マリュウのまだ幼い顔をしっかりと見つめながら
忌わしくも悲しい過去の出来事にについて ゆっくりと語り始めた…。


12年前、政府軍に反抗する反乱軍の活動は頂点に達し
国の至るところで内戦が起こっていた。
長男マスリ26歳、次男ツエル22歳、三男セエイ8歳の頃である。

既に その頃、長男マスリは前線部隊の中で指揮を取り
次男ツエルは国の士官学校を首席で卒業し 政府軍の要職についていた。
政府軍と反乱軍の戦いは 激しいものであったが
母親のサテイエは 息子たちの活躍を誇らしく思っていた。

その後、内戦は悪化し、カフチシティも幾度か戦火に見舞われた。
マスリもツエルも その戦いの先導に立って戦った。
そんな活躍もあってか 政府軍は圧倒的に優勢であった。

だが、劣勢を極めていた反乱軍は、謎の帝国バドランディアと同盟し
その武力を借りて 政府軍に反撃する。
帝国バドランディアの武力は、人類の想像を遥かに超えた破壊兵器を用いたもので
その威力は たちまち政府軍を圧倒した。
当初 反乱軍は、その帝国バドランディアの武力を
自分たちへの救いだと信じて疑わなかったが
やがて、その非道極まる無差別な殺戮の数々に
反乱軍の内部からも批判の声が上がる。
そんな批判者に対しても 帝国バドランディアは矛先を向けた。

そういった状況の ある日、反乱軍の兵士数名がマスリの部隊に投降した。
帝国バドランディアの登場により 極めて優勢であった反乱軍が
いったい何故 降伏してきたのか?
マスリは疑問を抱いたが、投降してきた兵士らの証言により その謎が解けた。

『帝国バドランディアの正体はエイリアン』

「この故郷EARTHを 帝国バドランディアの魔の手から救うために
 政府軍も反乱軍も関係ない。今こそお互い団結して帝国と戦わねば!」
反乱軍との和平を政府軍に提案したマスリであったが
その話は まったく信用されなかった。
そればかりか 反乱軍のスパイとして 銃殺されることが決まってしまったのだ。
弟のツエルも もちろん政府軍に抗議したが
これ以上 背けば 親も兄弟も同罪として処分するという…。
劣勢の政府軍には、最早 どこにも天使の羽ばたく余地は無くなっていた。


…長いサテイエの話を 真剣な眼差しで聞いていたマリュウは
「それで マスリ伯父さんは 政府軍に殺されてしまったの?」
震えた声で サテイエに問いかける。
「そうだよ…。悲しくて残念で仕方がないよ。あんなに いい子だったのに…。」
サテイエの眼から 涙が止め処なく流れた。
それは マリュウ自身、初めて見る祖母の涙であった。
「でもね…。その前に あの子は…マスリは… 願いをかけたのよ。」
「願い…?」
「そう。その願いが瞬時に叶って、ふたたび平和がやってきたの。」

マスリが最期にかけた願い…
それを機に 謎の帝国バドランディアからの攻撃は途絶えたとサテイエは語る。
その後、政府軍と反乱軍は和解し、内戦は事実上終わったことも…。

サテイエが話の続きを語り始めた時、
遠くのサイレンが 雨音に混じって鳴り響くのが聞こえていた。
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